ビザールの終 12
 16人の少女戦士達はドーター軍団へと挑みかかって行った。
 騒然としていた教室の生徒達は、状況を理解できていないなりに助けが来たのだと理解した。
 だが自分達と同じ生徒、しかも見覚えのある生徒達が突如正義の味方に変身し、その正義の味方に倒された怪物達が生徒の姿に変わっていくという光景は新たなる混乱を生んだ。
 その混乱が為、すぐにでも教室を飛び出し加勢に向かいたいと思っても、動く事の出来ないヒロイン達も大勢いた。
 また、あえて動かない者もいた。校庭にいるドーターがビザールクイーンについたドーター全員だとは限らない。教室で脅えている生徒の中にビザール派のドーターがいないとも限らないからだ。

「おりゃあ!」
「ぎゃぁ!」
 タイトレッドのビームソードがドーターを切り裂くと、ビザール細胞の黒い破片を撒き散らしながら裸の少女へと変わっていった。
 倒されたドーターはアラクネシスターズの蜘蛛糸とキッコーガールズの縄によって捕縛していくが、まれに捕縛を逃れ再変身し襲って来る者もいた。
戦況はレンジャー側に優位のようであった。
 だが、静かに異変が起き始めていた。
「あれ……?」
 それに最初に気付いたのはアラクネブルーだった。
 いつの間にか、足下の地面が漆黒の泥のような物に覆われていたのだ。ブーツを履いた他の者と違い、全身タイツのみの彼女だから足下の違和感に最初に気付いたのだ。(ちなみにアラクネレッドは熱くなりすぎて普通に気付かなかったのだろう)
(ドーターの破片……? まさか、これ全てビザール細胞!?)
「みんな、アッ!?」
 アラクネブルーが全員に警告をしようとした瞬間、漆黒の泥から触手のような物が伸びアラクネブルーの肛門を穿った。タイツ生地ごと肛門に侵入し、何かを流し込まれる感覚に言葉を失うアラクネブルー。その体に無数の触手が伸び、倒れたアラクネブルーのタイツに覆われた体を這い回る。

 校庭の地面を埋め尽くす、ビザール細胞の液体。まるで漆黒の泥の海の様になった校庭の中央が突如盛り上がった。
「うわっ!?」
「ひぃ!?」
 中央付近にいた者はヒロイン、ドーター問わずに慌ててその場から逃げだした。
 そこに出現した物、それは5mはある巨大な女体であった。
 腰から上だけの姿で現れた女体は、豊満な乳房が縦に3つ並び、腰や背中に大小無数の触手を携えたビザール細胞で出来ているらしい漆黒の体を持っていた。
 女体のサイズや異形もさることながら、ヒロイン、ドーター問わずに視線を集めたのは女体の頭部……いや、頭部と言うのだろうか。女体の首から上には、頭の代わりに少女の体が生えていた。
 ビザールクイーン。ドーター達を従える漆黒の異形が大きく腹を膨らませた脚のない姿で異形の上に鎮座していた。
 ビザールクイーンはその黒い目で周囲を見渡し、校舎へ中の生徒へと視線を向けた。
「私は……異形の母たる者ビザールクイーン。異形の身を持つ者、人の身でありながら異形の心を持つ者、この母の中へと来るがよい」


 戦いの始まりからビザールクイーンの布告まで、屋上で眺めている一団があった。
 十数人程の一団は、宇宙人か珍獣か、あるいは無機物や天使に悪魔と言った多種多様な異形の姿で一列に並び、成り行きを見守っているようであった。
 監視者、調律者、審判者……
 彼女らは皆、異形のコスチュームに身を包んだ異能の者達であり、この学園の裏の世界を極秘に運営、管理するシステムである。
 彼女達はそれぞれ学園で生活する者としての表の顔、裏の世界における裏の顔、システムとしての裏の裏の顔とも言える多面性を持っている。転がっている直径1mの球体のような物がライクランの大首領であり、少女のような形の膨らみのある黒い鉄板のような物がタイトレンジャーの総司令だという可能性もあるが、システム同士で互いに確認し合った事はない。こうして集まる事も基本的には無い事であり、それが現在の状況の深刻さを現しているとも言える。

 ビザールクイーンの登場に際し、青い蛾人間と言った姿の少女が飛び出そうとしたが、横にいた銀色の宇宙人姿に止められた。
「なんで……」
「今私達がやらなければならない事は、今井美佳が何を選択し、どういった結論に至るのかを見届ける事よ」
「しかし……」
「時は近いわ」
「え?」
「進化の時が近づいている……」


「ママ、どうしてこんな!」
 アラクネレッドが声を張り上げビザールクイーンに問いかける。
 ビザールクイーンは愛しげにその姿を眺め優しい声を出した。
「アラクネ……ビザールの堕とし子……さぁ、私の中にお帰りなさい」
 女体の腹が女性器のような形に裂け、渦巻く漆黒の穴を露わにする。
「う、わっ!?」
「ムグッ!?」
 ビザールクイーンから伸びた無数の触手がアラクネレッドと近くにいたドーターを絡め取り、引き寄せると腹部の穴へと放り込んだ。
「双葉!」
 未だ触手に絡め取られていたアラクネブルーの叫びも虚しく、アラクネレッドは引き込まれていく。
「ああっ、ママ、お姉さま!」
 穴の中で渦巻くビザール液は、力強くアラクネレッドを飲み込むとその異空間の如き体内へと引きずり込んだ。
 いや、この校庭自体が異空間になりつつあるのか、足下を埋めるビザール液は刻一刻とその水位を増しつつあった。
 女体の腰の辺りから、ラバースーツ姿の少女が現れる。前後に顔の付いた少女、スクナにビザール液が纏わりつき、その姿を巨大化させる。2m近くに成長したスクナの顔はさらに二つ増え前後左右の顔と、4本の腕を持つ異形へと変わった。
 さらなる異形と化したスクナは唸り声をあげてタイトレンジャーに襲いかかった。

「ビザールクイーン!」
 凛とした声と共に、全身銀色の少女が校庭に現れた。その後ろについて羽の生えた少女と剣士風の少女の姿もある。シルバリュームを始めとしたワイルドローズの面々である。
「あら、久しぶり」
「何を企んでいるか知らないが、学園には手出しをさせない!」
「強気ね、一体何が出来るのかしら?」
「我々……だけじゃないさ」
 ビザールクイーンがシルバリュームから視線をあげると、校舎のほぼ全教室や屋上から飛び出すヒロイン、異形たちの姿があった。
「私を倒しに来たか……それとも私の中に帰りに来たか?  姿を見せておらぬ者らも恐れる事はない。正体を現しなさい」
 ビザールクイーンの妊婦の如き腹が裂け、巨大な眼球が姿を現した。その中心の金色の瞳が、雷光の如き光を放った。
「うおっ!?」
「くぅっ!?」
 光の直撃に全員の眼が眩んだ。
だが、眼潰し以上にこの光は深刻な事態を引き起こした。
「ぐああああっ!?」
「ギ、ギギギィ……」
「きゃあああっ!?」
 教室の中から聞こえる唸り声や悲鳴。振り返ると、教室内の生徒の何割かが異形の怪物へと姿を変え始めていた。
 それらは皆、ビザールクイーンにつかなかったドーター、あるいはビザール細胞の汚染を受けながらまだドーターとして目覚めていない者達であった。それらが皆ビザールクイーンの眼光を受け細胞が活性化、強制的に変身させられたのである。
 眼光を受け苦しむのは、教室内の生徒だけではなかった。
 ビザールクイーンに挑みかかろうとしていたドーターや、ヒロイン達の一部も多かれ少なかれビザール細胞の活性化の影響を受け始めていた。


 タイトレッドの号令でαチームの五人が合流する。
「くそ、キリがないぞ!」
「いったいどれだけいるんだ!?」
 すでにビザールクイーンの臓物の如き状態に堕ちた校庭。
この異空間ではあらかじめビザールクイーンに喰われるか同化されるかしていたらしい風紀委員やドーターが所構わず出現し襲いかかってくる。
 さらにはビザールクイーンに敵対するドーターやヒロイン達も現在進行形で負ければ喰われ、同化されてしまう。戦況はヒロイン側に圧倒的不利であった。
 五人のタイトスーツは既にボロボロで、エネルギーも尽きかけていた。
「諦める訳にはいかないけれど……」
「どうしたらいいんだ!」
 とその時、「諦めるな!」と凛とした声と共に、銀色の鷹が舞い降りた。
既に満身創痍と言った姿の鷹の怪人は地面に降りると同時に銀色のスーツを纏った女の姿に変わった。
 それはαチームの司令松原葵であり、ライクランの改造人間シルバーホークであった。
「松原先生!?」
「その姿は……」
「私の事などどうでもいい! これを受け取れ!」
 葵が投げた物を五人がそれぞれ受け取ると、小さな黒いメダルであった。
「それをタイトスーツのバックルに入れ、タイトチェンジャーと叫べ!」
「でも……」
「いや、ここは先生を信じましょう!」
「よし、いくぞ!」
 五人は横に並びバックルにメダルを挿入して構えた。
「「「「「タイト・チェンジャー!」」」」」
 その瞬間、五人の体がそれぞれの色に輝き、スーツとヘルメットなどが光に分解された。
 タイトスーツは光の糸となり、五人の体に纏わりつき始める。
「スーツが!」
「再構成される?」
 光の糸は体の表面で編み上がりスーツを形成する。スーツは体を覆い、更には頭まで覆い尽くしゼンタイのような形状となった。
「これは……」
 ヘルメットもないメタリックカラーのゼンタイと化したタイトスーツに五人は戸惑う。着心地は奇妙だが体には妙に力が溢れるのも感じた。
「君達の特性に合わせて調整し、ライクランの技術を交えて作られた新式のタイトスーツだ。時間が足りなくてデザインはまあ、アレだがそんな事を言って言う場合でもないだろう」
「ライクランの……」
 そう言われて五人は、奇妙な着心地の正体に気付いた。体が火照るように熱い。性欲を引き出し力に変えるライクランの技術がタイトスーツに盛り込まれたという事なのだろう。現に密着、緊縛フェチである桃井裕美のスーツは他の五人よりも密着度が高く、体の凹凸が全て浮かび上がりそうな程である。
「まぁ、この際だ、使える物は何でも使おう」
「ああ」
「はい!」

 タイトグランドを始め、βチームはαチームの再変身を戦いの手を休めることなく見ていた。
(性欲の力…か……)
 タイトグランドがその言葉に気を取られていた時、ドリルのように回転する触手が勢いよく彼女の腹に向けて伸びた。
「ふぐっ!?」
 スーツこそ破れなかったが、スーツ越しに臍を回転触手に抉られてタイトグランドが呻く。意識が飛び掛けたタイトグランド、果歩の体を怒りと淫気が支配する。
(く、駄目だ、淫気に支配されたら……)
 震える果歩は変化したαチームを、そして死力を振り絞ってビザールクイーンに挑みかかるドーターをを見てある考えに至った。
(淫気も、力か)
 ヘルメットを脱ぎ捨て素顔を露わにした果歩は、深呼吸をしてから体の淫気を上昇させた。
(淫気に支配されるんじゃない。淫気を支配する)
 果歩のタイトスーツの両腕が裂けると、露出した両腕は肉色の触手のような形に肥大化した。
さらには顔の上半分が裂け、陰唇のような形に変わる。もっとも実際に顔が裂けたのではなく、ビザール細胞に肉付けされた特殊メイクの様なものだが。
 完全な異形化ではなく、タイトグランドとイリュージョンの中間体、タイトイリュージョンとでも呼べそうな姿に変わった果歩に、他のβチームのメンバー、とりわけタイトストームの風間法子は慌てた。
「姉さん、その姿は……」
「イイカラ、アナタも変ワリナサイ」
 お前も変われ、その言葉に法子の中の何かが変わった。
法子の両腕両足が変化し、大振りな刃に変わる。
「わっ、とと……」
「行け!」
 果歩は倒れそうになる法子の体に触手を巻き付け、勢いよく投げる。法子はストームスーツの飛行能力を使い、巨大な十字手裏剣の如く回転しながら飛行した。

「果歩は兎も角、法子もドーター?」
 タイトライトニングとタイトブレイズは二人の変化に目を見張っていた。
「法子は果歩と一緒にいたからだろうけど……いや、我々の中にもビザール細胞があるかもしれないわ。やってみる?」
「何を?」
 ライトニング江崎麗華の謎な提案に、ブレイズ笠井有紀は怪訝そうな顔をする。
 その眼の前で麗華は突然倒れ、ビザール液に体を浸した。
「お、おい!?」
 黒い粘液まみれで立ち上がった麗華はビザールクイーンの眼光に身を晒した。
 するとその体を覆うタイトスーツとビザール液が変化し、体を覆い始めた。それらは混じり合い、麗華は体の右半分が黒、左半分が豹柄の怪人へと変わった。
「なるほど、やはり以前のビザール事件の時から、多かれ少なかれビザール細胞に感染はしていたみたいね」
 人間のままの目で自分の姿を観察している麗華に有紀は呆れ声をだす。
「無茶苦茶するなよ。どうなるのかもわからないのに」
「後輩二人だけに無茶させとくのはよくないわ。アナリースっていたでしょ?」
「うん?」
「ドーターだろうが何だろうが、正義の心さえ持ってれば戦えるってものよ。ビザールクイーンだって、こんな無茶なことしなければ……」
「言ってる場合か……えい!」
 有紀も、自らビザール液に飛び込んだ。

 果歩と豹怪人になった麗華、二つの狼の頭を持つ怪人になった有紀、戻って来た法子らは一列にならんだ。
「何もお二人まで……」
「何、ビザールクイーンの狂気に付き合うなら、私達だってこれくらい」
「正義の味方には見えないけれど、まぁいいか」
「行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
 異形の集団と化したβチームは勢いよく突撃を開始した。


 混沌とした異形達の戦いは、さらに激しさを増していった。
与一
2010年08月31日(火) 19時08分19秒 公開
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No.2  与一  ■2010-09-04 19:29  ID:w2M0sOoRRI2
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ご感想ありがとうございます
タイトレンジャーの選択は展開にはそれほど影響は与えないですが、結末には関係してくる予定です
No.1  カギヤッコ  ■2010-09-01 01:30  ID:L2j8H91d8iI
PASS 編集 削除
ビザール動乱、やはりドーターが多かれ少なかれ反応と言う感じですね。
そしてタイトレンジャーもαとβで対象的なフェチ二段変身…。
これが一体どういう事になるのか思い切り気になる展開ですけど…こちらも早く次のフォローを書かないと(おいおい)
総レス数 2

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